科学を楽しむ木の遊び具・おもちゃ
ちゆう工房
        CHIYOU-WOODWORK
トップページ 作品 簡易工作 関連伝承玩具 プロフィール お問い合わせ

                 ブランコこぎ 




ブランコを少し揺らし、タイミングよくレバーを押すと人形が動き、立ちこぎや座りこぎをします。

なぜ?
どんなしくみでブランコがこげるのだろう。立ちこぎと座りこぎの違いは何だろう。



        動画をご覧になるには Windows Media Player が必要です。
              YouTube 「ちゆう工房」でもご覧になれます。
         
しくみ

ブランコを揺れにあわて繰り返し押してもらうとだんだん大きく揺れます。ブランコこぎは乗っている人が自分の力でブランコを揺らしているので、しくみはちょっと違います。
立ちこぎ
この「立ちこぎブランコ」はレバーを押すと体が引き上げられ、レバーを放すと体が下がるようになっており、揺れの方向には力は働きません。初めに少し揺らし、ブランコが後ろから前に揺れる時にレバーを押し、戻りの折り返し前にレバーを放します。これを繰り返すと揺れがだんだん大きくなります。図ではブランコが後ろから前に揺れる時だけレバーを操作し、体を上下していますが、前に振れる時と後ろに戻るとき、両方でレバー操作をすれば、早く、大きく揺れるようになります。
このような立ちこぎの主因はパラメータ励振と考えられます。
パラメータ励振
「立ちこぎブランコ」は図のように糸を固定しないで支点にかけた振り子に相当します。
①から揺れ始めた錘の速度、遠心力が最も大きくなる最下点②で、重力と遠心力に抗して錘を③に上げると揺れは速くなり、最上点の④まで上がります。
④で振り子が止まったときに糸を緩めて錘を下げると、重力分の仕事は使われますが、遠心力分の仕事はそのまま保持されて⑤の位置に下がり、⑥に戻ります。①と⑥の高低差は錘を遠心力に対して引き上げたエネルギーによっているわけです。
これが繰り返されると、振り子はだんだん大きく揺れていきます。このような揺れは振り子自身を強制的に揺らすのでなく、振り子の糸の長さを変えることで揺らしており、パラメータ励振といわれています。
揺れの減速
この「立ちこぎブランコ」は実際のブランコに比べて小さいため、振動数が大きく、揺れが速くなり、レバーを押すタイミングがとりにくい難点があります。このブランコは物理振り子になっているので、ブランコの支点の上側に相当する位置に減速用の錘を付けてみました。これによって揺れが遅くなり、だいぶ見やすくなります。ただ、錘をあまり重くすると振り子のパワーが小さくなったり、人形を上げると揺れの速さが逆に遅くなるケースもあって、減速には限度があります。このため、減速用錘をつけても、前に揺れだすとすぐにレバーを押し、折り返す前にレバーを放すというように早めに操作をしています。
実際の立ちこぎ
振り子モデルのように最下点で体を上げ、最上点で下げるといった理想的なタイミングで動作をすることは実際には難しいので、乗っている人は揺れの最下点でひざが伸びて体が上がっているよう、折り返しの最上点でひざが曲がって体が下がっているように少し早めに屈伸しています。これでもブランコの重心が上下し、振り子としての長さを変化させることなるのでこぐことができます。
また、パラメータ励振だけでなく、座りこぎでもふれますが、握っている綱を引き寄せ、足を前に振り出すことで、重心を前に移し、その戻る力を利用して、こぎ始めるとともに、より揺れやすくする動きも加えていると考えられます。
座りこぎ
この「座りこぎブランコ」の操作はブランコを少し揺らし、前へ揺れ始めてすぐにレバーを押して上体を倒し、足を上げ、さらに、握っている綱(棒)部分が曲がって体を前に振り出します。折り返しのところでレバーを放して、上体を起こし、足を下ろし、そのまま後方へ戻ります。これをタイミングを合わせて繰り返すことにより、揺れがだんだん大きくなります。
揺れる方向には、直接力がかかりにくいようになっていますが、前方へ重心を移動させて、それによる揺れ戻りを利用しているので、揺れる方向へは作用しています。
人のひざ下の重量比は数%とも言われ、足の上下だけによる重心の上下は少ないと思われるので、座りこぎは、パラメータ励振よりは、前方への重心の移動と、その戻りによる揺れをタイミングを合わせて励振することが主因と考えられます。
立ちこぎと同様に減速用の錘をつけてみましたが、重くすると揺れの増大が弱くなり、あまり減速できませんでした。
実際の座りこぎ
座りこぎで大きく揺らしているのを見ると、前方に揺れる時上体を後ろに倒し、その反動で足をあげ、折り返しで上体を起こし、足を下ろして戻るという動作を繰り返しています。足を上げても上体は倒すわけですから、そのままでは、重心は上がるとは思えません。ただ腕に力を入れて足を振り出すと、綱を握っているところを支点として綱が折れ曲がり、体全体の重心が一層前方に移り、揺れ戻る力が働きます。「座りこぎブランコ」はこのようなこぎ方を模しています。
上体をあまり倒さずに腕で綱を引き、足を上げるこぎ方もありますが、これでは幾分重心が上がる効果も加わっていると思われます。
参考
戸田盛和:おもちゃの科学①(日本評論社)
大槻義彦:サーカスの科学(講談社ブルーバックス)

 立ちこぎ

   

 座りこぎ
   

こぼれ話
ブランコこぎはパラメータ励振の例としてよく取り上げられ、力学的に解析もされています。ただ、実際のブランコのこぎ方はいろいろあり、パラメータ励振だけでなく、いくつかの要素が関わっているようです。
このため実際のブランコと乗っている人の各部の寸法や重さに対応したミニ模型にするのが理想ですが、ここでは単純化して重心の移動を強調するよう、立ちこぎ人形は上体を、座りこぎ人形は足を重くしています。
また、ミニにすると振り子として振動数が大きくなり、かなり速くなってしまいます。減速用の錘も抵抗を加えるわけですから、遅くなる反面、加振効果が低くなることがあります。
そんなわけで実験装置ではなく遊び具として、ブランコこぎに興味を持ち、その理屈を考えるきっかけになればと思っています。


                                                                         作品リストへ戻る