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ちゆう工房
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                  関連伝承玩具(2)

2.ガリガリとんぼ(ガリガリプロペラ)

支持棒の角や側面に溝を刻み、その先端にプロペラを自由に回るようにピンや釘で止めています。
擦り棒で角の溝(側面のときは溝の角)を擦るとプロペラが回ります。
うまく回したり、回る方向を変えるにはコツがあって、
①支持棒を握り、親指などで棒の側面を押さえます。押す面によって回転方向を変えますが、押す位置や擦り方で振動を調整する必要があります。
②擦り棒を握る指で支持棒の側面を押しながら擦ります。よく回り、押す面を変えると回転方向が変わります(図のa)。
③断面のたて・よこ比の大きい支持棒を使い、溝の角を擦ります。指を触れなくてもよく回り、擦る角を変えると回転方向が変わります(図のb)。

こうした振動→回転変換の原理やメカニズムはいろいろ研究されています。
それらによりますと、
擦り棒で溝を擦ると、その先端のプロペラ軸で、直交する2つの方向の振動に位相差が生じ、そのリサージュ図形が楕円を描きます。この楕円回転により、プロペラが回ります。
これは高速度カメラやレーザー変位計による軌跡からも確認されています。

②のように支持棒の一面を押さえる場合、押さえの無い面の方向では、擦り棒が溝に来ると支持棒が上がって、擦り棒はすぐに溝に当たります。一方、直交する押さえのある方向では支持棒は上がらないので、 擦り棒は少し遅れてから溝に当たります。これによって、押されている方向の振動成分と、それと直交する振動成分で位相差が生じます。

③の支持棒が長方形断面の場合はたて、よこ2方向の固有振動数が異なり、溝を擦ると低い振動数のほうが位相が遅れて位相差を生じます。
なお、①では押さえた方向の固有振動数が高くなり、直交する振動と位相差を生じるとされています。


 ガリガリとんぼ
       


 回転方向の制御




 長方形断面支持棒のガリガリとんぼ


     


参考
1)里信純ほか:振動ー回転変換おもちゃ゛ぎりぎりがりがり゛の動作機構,信学技報,US,超音波 94(390),45-52 (1994)
2)K.Nakamura et.al.:A Scientific Toy Using Vibrations,Proceedings of ICA2004.We.P1.12. ppⅢ-2323-2324
3)太田博ほか:ガリガリとんぼの羽の回転に関する研究(第1報.第2報),愛知工科大学紀要,第7巻 ,pp1-14 (2010) 
4)藤井和成ほか:玩具゛ガリガリプロペラ゛の物理,関西大学工学会誌,Vol.13 No.3 (2006)
5)戸田盛和:「おもちゃの科学(1)」 日本評論社 (1995)
こぼれ話
アメリカ先住民が発祥のおもちゃといわれ、世界各地で広く親しまれています。アメリカではhooey stick、Gee Haw Whammy diddle などと呼ばれていて、"Hoony"、"Gee、Haw" の掛け声とともにプロペラの回転方向を変えるなど、マジック的にも楽しまれているようです。

このおもちゃは「参考」に示したように、物理教育でよく利用、研究され、また工学分野でも超音波モータの駆動やボルト・ナットの緩みの原因に関連して研究されています。

それにしても、「振動」が「回転」に変わることを最初に気づいた先人には、偶然かもしれませんが、感心するばかりです。
これは想像ですが、音を出すために木に溝をつけ、擦ったところ、たまたま先端に釘止めした小枝が回ったのかもしれません。似たものに「ギロ」や「棒ささら」といった楽器があります。


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