科学を楽しむ木の遊び具・おもちゃ
ちゆう工房
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                    ひれウエーブ (Fish fin wave)



「アカエイ」:ハンドルを回すと胸びれが波打つように動きます。

「タチウオ」:レバーをトントンと押すと、背びれが波打つように動きます。

なぜ?
どんなしくみで、「アカエイ」や「タチウオ」のひれが波打つように動くのだろう。

                             
しくみ
「アカエイ」のひれはカムを使って、「タチウオ」は波の実験で使われる〈レイリーのすだれ〉*を応用して、波のように動かしています。
1.「アカエイ」のしくみ
図1                      図2


図1は「アカエイ」のしくみ部分の写真、図2はカムによってひれを動かすしくみを示しています。
一連の円板カムは偏心カムで、それぞれは一定角度(30°) ずつずらして回転軸に固定しています。
ハンドルを回すとベルトを介してこの軸が回り、カムが各ひれを順に押し、正弦曲線状に波打ちます。
左右のひれの中間の真上にカムの軸があるので、両ひれは少しずれますがカムに当たり、ほぼ対称に揺れます。

2.「タチウオ」のしくみ             図4
図3
 

図3は「タチウオ」のしくみ部分の写真、図4はその機構
を示しています。
各ひれは、回転できるよう軸に通し、細いひもで間隔が
一定になるように連結し、下部に付けた錘で軽く引張っ
ています。
また、ひれのバランスをとり、慣性を大きくするため、ひれの中側の端に錘(ナット)を付けています。、
レバーを押すと駆動用のひもによって一番上のひれが引かれ、離すとバネで戻ります。レバーをトントンと繰り返し押すと左右に揺れ、この揺れが波を伝えるひもを介して、各ひれに順々に伝わり、ひれ全体が波打ちます。

この「ひれウエーブ」は全体を少しコンパクトにしょうと作り始めたのですが、どうしても仕掛けはある程度の大きさが必要で、その部分が厚くなり、アカエイやタチウオの扁平さが出せず、デザイン的に問題を残しました。

タチウオでは仕掛けに〈レイリーのすだれ〉を応用してみましたが、他には例をほとんど見かけないので、初チャレンジと思っています。原理を生かしながら機構を変えてるため、揺れる棒に相当するひれが軸周りに対称でなく、ひれの重さのバランスををとる必要があります。また、波を伝えるひもが1本なので、ひれ同士をよりきちっと等間隔にそろえることと、その張力の調整(錘の調整)も必要です。コンパクトにしたためこれ等の精度が出にくく、波がちょっと不ぞろいになっています。やはりもう少し大きく作らないと難しそうです。

                                 図5
*「レイリーのすだれ
図5のように一定の間隔で棒を並べ、中央をテープで貼って止めたり、
2本の紐で一定間隔で止めます。
上端の棒を揺らすと、テープや2本の紐のねじれが順に伝わって、棒が
波のように揺れます。
ストローや割りばしをセロテープ止めて、簡易に作ることができます。

本格的なウエーブマシン(波動実験器)は金属棒の中央を板バネやロッド
スプリング等で固定した水平すだれタイプのもので、波の伝わり方や、
基本的な性質が観察できます。
                            
こぼれ話
〇波の動きを取り入れた、木のからくりモデルも、波の動きにつれて船や魚が動くもの、くねくねと虫が動くようにしたものなどいろいろ作られています。今回は魚のひれが波打つのを見て、魚にしようと思いました。
エイの仲間はマンタのように、胸ひれを鳥が羽ばたくように動かすものもいますが、「アカエイ」は波打つように動かすので、まずこれにしました。
「アカエイ」のひし形状の扁平な胸びれは先の方が薄く、しなやかにウエーブします。目は背中側にあるのですが、お腹側にある鼻が目に見え、その下に口があるので、下から見ると笑っているように見えます。その下の左右の点々はえら穴で、サメは体の側面にあるので区別できるそうです。
そして、たまたまTVを見ていたら、さかなクンが解説する番組で「タチウオ」を取り上げていて、その背びれが見事に波打つのを見て、もう一つはこれにしました。
「タチウオ」は銀色で太刀のよう見え、透き通った大きな背びれがヒラヒラときれいに波打ちます。この発達した背びれによって、立ち泳ぎも得意で、頭上の魚に気付かれることなく素早くとびつき、とらえて食べるそうです。

「アカエイ」も「タチウオ」も魚としては変わっいますが、
いずれも進化の一端が伺えて面白いですね。

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